信仰の生まれる場所

家田 裕美子

作者によるコメント

一家の習慣である「うちの神様」の参拝に対する疑問から、日本人が信仰する神、そして神を祀る神社について考えていく。前半は辞典による神社の定義、と大まかな歴史、そして各地の有名な神社を訪れ、その形態を探る。後半は幼少期より身近に感じていた地元の神社について述べ、有名な神社と比較し共通点と相違点を見る。更に地元の神社の「氏神神社」としての機能を意識しつつ「うちの神様」への疑問を解いていく。

担当教員によるコメント

家田裕美子さんの『信仰の生まれる場所』は、「神社」とは一体どのような信仰の施設だったのかを、文献調査とフィールドワークから浮き彫りにした労作である。著名な各神社を自分の足で回り、さらには地元に伝わる信仰と「氏神」について地道な現地調査とインタビューを重ねて一つのヴィジョンを導き出している点に、この論考の独創性が存在する。巨大な岩や滝に対する自然信仰からはじまり、ごく近くの「うちの神様」まで、不可視の聖なる存在を宿らせる「もの」を探求することは、芸術表現と決して無関係ではないはずだ。荒々しい自然と、人々の間に温かい絆を結ばせる穏やかで無名の小さな神々と、「神社」という概念からははみ出してしまうものをうまく拾い上げることに成功している。

准教授・安藤 礼二