【創立90周年記念事業】スーパーマーケットの跡地“BLUE CUBE”で開催された現代アート展「EXPLOSION & EXPANSION――爆発と拡張」レポート

10月19日から11月3日まで創立90周年記念事業として、本学の学生および助手・副手によるグループ展「EXPLOSION & EXPANSION 爆発と拡張 ―― 多摩美術大学の制作の現場から」を、2022年に新しく本学の附属施設となった「BLUE CUBE」で開催しました。本展覧会を監修した多摩美術大学美術館・大島徹也館長と、作品を出品した作家たちに話を聞きました。
展覧会の監修を担った大島徹也館長が、本学開学を「ビッグバン」に例えた企画の狙いと意義

本展覧会は本学創立 90周年記念事業の一環として行われるもので、展覧会のタイトルは「EXPLOSION & EXPANSION 爆発と拡張 ―― 多摩美術大学の制作の現場から」です。90年前の本学開学を宇宙の始まりであるビッグバンに例え、その間、さまざまな形でより良い教育研究を目指し、拡張してきた本学のさまを捉える展覧会にすべく、タイトルを命名しました。2023年3月まで多摩センター地区にあった多摩美術大学美術館は活動を終え、将来的にこの「BLUE CUBE」と呼ばれる施設にリニューアルオープンする予定です 。
理事長から、大学に新たに加わったBLUE CUBEという空間で、展覧会開催の要望があり、企画することになりました。
予算は潤沢でなく、展示会場としては通常の美術館グレードではないため、難しさを感じていました。しかし、周囲を見渡せばここは美術大学です。目の前には優れたアーティストとデザイナーの卵がたくさんいます。本学は大きく分けるとファインアートとデザインアートの2分野に分かれているのですが、全学的に広く学生を出品作家として集めることにしました。本学の校是でもある「自由と意力」にあてはまる素晴らしい活躍をしているさまを、学内外の皆様に示そうと企画しました。
もう一つ、この展覧会に込めた趣旨として、BLUE CUBEという青い建物は将来的には何らかの複合施設になります。美術館はあくまでその中の1エリアであり、他のエリアには複数の施設も入り、生まれ変わる予定です。
数年後に正式開館する予定であるものの、BLUE CUBEのポテンシャルを、まだ私たちもよくわかっていません。今回の展覧会を行うことで、この空間が持つ魅力とポテンシャルを最大限に引き出し、新しい何らかのアートスペース構想の一助としたい、そういう狙いもあります。
出品作家は学科全域にわたる学生を中心にセレクトし、合計41点の作品が出品されました。1点がたくさんの細かなパーツからなっている作品もあり、物量感としては点数以上に感じるでしょう。
一方、出品作家には入っていないのが、演劇舞踊デザイン学科の学生です。彼ら本来の領分である演劇舞踊そのものを一つのパフォーマンスとして行ってもらう形で、関連イベントに参加してもらいました。
また、芸術学科の学生も出品作家には入っていません。理論に関する学科の学生ですので、トークセッションイベントの切り回し役を担ってもらうことにしました。これなら芸術学科の学生ならではの理論の力をトークに活かしてもらえると考えました。
こうして、全学科の学生、助手・副手に活躍をしてもらう。それによって、90年前に開学したときから、現在に至るまでの展開の最前線をお見せすることが、今回の趣旨となります。

本学に在籍の学生、助手・副手の中から13名と3チームをセレクト
――大島徹也館長 作家選定の視点――
企画段階において、天井までの高さ6m、そして総面積が2,900㎡もある広大な空間に対して、作品が負けないことを重視して作家を選定しました。仕切りのない大空間の中でこそ活きる表現ができる作家をあらゆる分野からセレクトすべく、私たちは昨年1年間かけて、可能な限り、学内のさまざまな展示を見て回りました。セレクトのしかたもチャレンジで、かつてないやり方だったのです。
藤原禎之 《再構築された壁》《WHITE CUBE》《壁と扉》《8枚の記録写真》《3枚の記録写真》

会場入口を進むと目の前に現れる作品で、BLUE CUBEの改修工事を取材し、記録写真に収め、間仕切り板として使用されていた廃材を仮設壁にして活かしています。大島館長によると、「相当の加工を施したグラフィック作品になっている。写真中央には扉があり、現世界とその先という、両方を跨ぐような不思議さが特徴です。」と解説。藤原さんによれば、「美術館が長期休館中でこのBLUE CUBEはまだ美術館とも、そうでないとも言える立ち位置で、なんとも言えない謎の空白の時間にあります。扉の表と裏でちょうど境界にいる思いで、この扉をモチーフにした。」と明かします。まさしく、現在と未来の境界線のようなエントランスです。

美術研究科 博士前期課程 デザイン専攻 建築・環境デザイン研究領域 2年
山田大輝 《群集,26》

渋谷のスクランブル交差点を渡る人たちの写真からシルクスクリーンの技法で表現した版画作品。大島館長によると、「写真と版画と絵画、そういった異なる3つのジャンルの関連性を構造として追求しています。」と解説。普段とは異なり、BLUE CUBEという大きな空間での展覧会ということで、自身過去最大の高さ1.6m×幅4mという巨大サイズに取り組んだ意欲作。山田さんは「写真をモチーフに、遠くから見たら写真に見え、近くからだと色の粒になっているのが見えてきます。版画の刷り重ねた状態が可視化されていく作品です。」と紹介。色数を増やして刷り重なる状態をより見せるために、26色を使用しています。近くで見ると、各色の粒が混ざり合っていないことが見て取れます。この写真をモチーフにしたのは、情報が多かったからで、いろんな人がいて、いろんな状況を切り取ることを粒が集合している状態で表しているそうです。

美術研究科 博士前期課程 絵画専攻 版画研究領域 2年
加藤舞 《寂》《時つむぎ》《Melt》《つきのうた》《瀬音》《En 80-90》

学部生時代から彫刻研究室の助手として活動する現在まで、自身の10年間の軌跡が見て取れる形で時系列で6つの作品を展示。ガス溶接・溶断技法を用いて、空間に鉄のドローイングを想起させる抽象彫刻の制作を行っています。「作品を並べたことで、扱ってきた素材に真剣に向き合い、表現を貫いてきたことを実感しています。」と加藤さんは振り返ります。また大島館長は、加藤さんを「彫刻というと伝統的にはボリュームで捉えて表現する中、ヴォイドを表現要素としていく20世紀の新しい流れを組みながら、溶接・溶断技法で彫刻的な削りの作業などを駆使する作家」と評します。BLUE CUBEの硬いコンクリート、背後の窓から注がれる自然光、トータルで空間を作り上げるイメージで作品が配置され、荘厳な展示空間に仕上がっていました。

彫刻研究室 助手
池上創 《CIRCULATIONs》

ホットワーク(高温で溶かしたガラスを柔らかいうちに加工するガラス工芸全般を指す)における代表的な技法、吹きガラスを用いた作品を展示。作家自身が制作する作品テーマはエネルギーです。自分の中にあるものを外に出し、逆に自分の外にある自然を取り入れ、造形していきます。色のついた作品の地面部分にはガラスの破片があり、枯れた葉が養分になって新しい命が生まれるさまを表現。「ガラスは溶かせば再利用できることを植物に見立てて表現しました。」と池上さん。池上さん独自の技法を駆使することで、意図しないガラスの自然な動きを取り入れ、より自然に近い形でガラスの生命力を表現したそうです。「BLUE CUBEはスーパーマーケットから、新しい施設に生まれ変わろうとしている。そんな姿に重ね合わさる形で硬いコンクリートを打ち破り、成長し芽吹いていく力、強い植物の姿を彼の素材であるガラスで、自分のエネルギーを吹き込んで表現した作品です。」と、大島館長は解説します。

ガラス研究室 副手
坂爪亜蓮 《海のかたち》《誰かに寄り添うために、一拍分余計に呼吸が必要だった》《記憶の変熔〜吸って、吐いて、柔らかく、伸びやかに〜》

鉄を素材にして鍛造し、ひだや重なり、捻じ曲がりや巻きつきを表現している作品です。枝は巻きつきあって上昇するフォルムの根幹を担い、副題「吸って、吐いて、柔らかく、伸びやかに」を体現しています。「バロック的な歪んだようなダイナミックな表現を工芸の分野において、鉄という素材で行っていて、造形センスも優れています。」と、大島館長。特にBLUE CUBEにおける展示として、建物の壁面を支える無骨で幾何学的な太い鉄骨がむき出しのままになっている中、坂爪さんの作品が対比的に調和している点を大島館長は評価しました。

美術研究科 博士前期課程 工芸専攻 金属研究領域 1年
胡琪 《扉》

BLUE CUBEの高さや広さを十分に活かした絵画作品で、10mもの巨大なキャンバスの表だけでなく裏も描き、天井から吊って立体的に展示し、来場者は絵の内側・外側を自由に行き来できます。「絵画のあり方を根本から問い直し、“1つの環境”を作り出すことで鑑賞する側も、自分の体を使って作品の中に入っていく新しい感じ方が得られます。絵画には表と裏があるという、既存の概念をくつがえすような、新たな芸術のあり方を彼女は探っています。」と、大島館長。「西洋絵画は資本主義の時代に生まれ、運びやすさや窓の風景の関係で作られたけれど、絵画とは何か?額縁はいるのか?絵の裏=内蔵の部分、真ん中の空間へと自由に入って体で鑑賞してほしいです。」と、胡琪さんは言います。

プロダクトデザイン研究室 助手
大島宏士郎 《Humanatomy》

グラフィックデザインを出力して壁一面に貼り、くわえて3Dプリンターで出力した立体的な作品も展示。さらに映像も展開した3つの表現を用いた作品です。デザイン構築にあたり、人体を解剖学的視点で捉え、本展出品作を《Humanatomy》と名付けました。これは「Human=人間」と、「Anatomy=解剖学」を組み合わせた造語です。「彼自身はアスリートだったので、身体性に関心を持ってグラフィックデザインに取り組んでいます。何十年後か何百年後かわかりませんが、進化を遂げた人類の未来の臓器や骨格をグラフィックデザインとして創作しているのです。」と、大島館長は話します。

美術学部 グラフィックデザイン学科 4年
陳柏欣 《海賊パイナップル》《南冥の鵬》

亜熱帯から熱帯に属し、海に囲まれる台湾を象徴するパイナップルやバナナなどをモチーフに描いた作品です。陳さんの制作は自身の台湾への思いが原動力になっています。「台湾人としてのアイデンティティを自ら、日本画という手法・手段を通して常に問いかけている作家。台湾人とは何なのか、台湾人としての未来をどういう風に切り拓くのか、そういうことを自らの絵画で表現し、私たちに訴えかけています。」と、大島館長。

美術研究科 博士後期課程 美術専攻 3年
紫谷きづな 《table》《carpet》《mirror》《sofa》《bed》《chair》《lamp》《chandelier》 《door》

テーブル、ベッド、ソファなど日常的に使う家具をモチーフとした木彫作品で、実際に家具として使えるものもあります。紫谷さんも「私自身が使いたいと思う家具を作るところから始まり、テーブル、ランプ等は自宅で実際に使っていました。」と話す。家具を表現した彫刻であると同時に、家具そのものとしての彫刻でもあります。大島館長は「木が朽ちたり、割れたりしているところもありますよね。本当の家具であれば不完全とみなされますが、逆に彼女は素材上の欠点を作品の表現に取り入れている。」と、解説。展示作品のほとんどが楠で、《door》は欅を用いています。上野毛キャンパスの再整備により、伐採された欅を引き取り、作品として生まれ変わらせたのです。中央にある《chandelier》は楠と欅を用いた彼女の最新作で、「細部を省略し、抽象に向かう性質が彼女の新展開を予告しているかのようです。」と、大島館長は評しました。

美術研究科 博士前期課程 彫刻専攻 2年
檜木小春 《Unidentified》

「昔の物でありながら、未来の物のようにも思える」という自身の着想から、古代遺跡のような雰囲気がある三角錐の作品が展示されています。大島館長は、「表面には電子回路を想起させるパターンが陰刻されていて、古代の物なのか、現代の物なのかわからない。ある種、オーパーツ的な不思議な雰囲気を湛えています。」と、解説。作品の中心に入ると、ある種の磁場が三角形の中に生じ、上から発せられる何かによって、自分の存在が解き放たれる感覚すら覚え、今、この場について考えさせられます。大島館長も「その意味でも、BLUE CUBEがスーパーマーケットから新しい多摩美の何かに生まれ変わろうとしている中、今ここは何なのか?を考えさせてくれる点で展覧会のコンセプトにマッチした不思議な作品。」と、話します。

美術研究科 博士前期課程 工芸専攻 陶研究領域 1年
鄧丁文 《Been there before》

作家自身がBLUE CUBEを3Dスキャンして映像に仕上げた作品で、バックヤードのような場所で上映されています。現実の建物であるBLUE CUBEの中に、バーチャルなBLUE CUBEの世界が存在し、あたかも自分が歩き、動いているかのように体感できる映像で、一人称視点のホラーゲームテイストのカメラワークで夜のBLUE CUBE内を散策する映像が映し出されます。ゲームエンジンで再構成された本作は現実の記録のようで、どこか実態を持たない歪みを帯びています。流れる映像終盤では、音楽と環境音が消え、暗闇に包まれる時間が訪れ、青い蝶はBLUE CUBEに辿り着き、やがて飛び立ち、夢と現実の間に消えていきます。

美術学部 情報デザイン学科 メディア芸術コース 4年
レモラ 《Construction・Dining》《Construction・Backyard》

菜箸、スプーン、クリップ…机にたくさん並べたキッチン等で日常使いするパーツを普段用いない組み合わせによって、意外なオブジェが生み出される事象を即興で創作するワークショップ形式の作品。もともとは統合デザイン学科の演習授業「コンストラクション」(荒牧悠講師)が発端で、身の回りにある物の性質に着目することで、本来の使い方とは異なる自由な発想が呼び覚まされます。大島館長は、「来場者はある意味、出品作家の一人になれるというコンセプト。会期を追うにつれ、冷蔵ショーケースに陳列されて不思議な作品として“拡張”されていく。また、地域コミュニティとの関係を考えても、特に小さなお子さんに展覧会を楽しむ経験をしてもらえたら嬉しいです。」と、話します。「今回は食卓に近い素材を集め、展覧会タイトルにつながる“爆発”を目標に来場者と共有していきたいです。新しい視点を持つきっかけになれば。」と、レモラのメンバーは話します。

野澤遥歩さん、寺嶋希海さん、中川新さん
美術学部 統合デザイン学科 4年
砂子愛 《ピクセル食品》《究極の抽象化野菜》《スーパー◾️多摩美術大学前店 ピクセル食品市 広告》

りんごやニンジンなどの食品をモチーフに、抽象的なオブジェをBLUE CUBEのかつて青果コーナーだった場所に展示しています。「究極の抽象化野菜で、ピクセルアートの原理に基づいて抽象化したものです。」と、大島館長。作家はこれまでも食品をモチーフにしたピクセルアートを制作してきました。「例えば、一つの物をどこまで粗くしたらわからなくなるんだろう、を突き詰めていきました。本展においては、まずは100のピクセルアートを制作して具体から抽象へ。次に、展示スペースに設置されている冷蔵ショーケースをどう使うかを模索しました。そこで、ピクセルアートを立体にすることに辿り着いたんです。」と、砂子さんは言います。特に素材を立体化する中で注意したのが抽象化の先にある具体化でした。例えば、りんごなら「ヘタ」がなかったらわかりません。削ぎ落とすようにドットで抽象化した先に、具体化して要素を足していきました。

美術学部 生産デザイン学科 プロダクトデザイン専攻 4年
河合音和+水野ねね+湯浅薫子 《CHROMATIC CUBE》

空中に浮かぶテキスタイルが天井の四方から吊るされている作品が、展示会場の中央に見えてきます。「今回、BLUE CUBEの開放感ある、高さ6mの天井の魅力を活かさない手はないと考えました。作品内部のテキスタイルで仕切られた通路を往復すると、距離が100mあり、空間インスタレーションのような作品になっています。BLUE CUBEという箱の中に、テキスタイルに覆われたもう一つのBLUE CUBEが存在する入れ子構造として、来場者を出迎えてくれます。」と、大島館長。旧スーパーマーケットとして残る色味や周囲の看板の色に見合ったものを用い、売り場の構成図からもデザインの着想を得て取り入れたため、建物そのものとの融合も図られています。

美術学部 生産デザイン学科 テキスタイルデザイン専攻 4年
のえのん 《拡張ソングミュージック》《Made in》《#PR》

DJブースが中央に置かれ、周囲を冷蔵ショーケースが囲むという異質な空間に展示された作品。向かって右側の冷蔵ショーケースには中古レコードが展示され、奥には石鹸、左側にはぬいぐるみが陳列されています。本来は物理的な産地を示す、「Made in」の曖昧さを再考する試みに。レコード盤には絵が描かれ、プレーヤーで再生するとノイズが生じます。元の音ではない、新たなノイズを発生させてミュージックは「拡張」され、新たな音楽への体験に参加できるわけです。「作品の一貫したテーマとして、彫刻を拡張する素材として音を用いて、音を拡張する素材として彫刻を用いる相互作用がおもしろい作品作りを考えています。」と、のえのんさん。また、使用済みの石鹸を3Dプリンターで再生産し、新たなものへと生まれ変わらせます。「使われて形が変わること自体も、彫刻的ではないか?という斬新な考え。石鹸はもともとMade in Chinaなどですが、使用することでMade in 自宅、Made in Tokyoになりえます。」と、大島館長。ぬいぐるみは小学4年生から手がけるYouTube動画において、クレーンゲーム案件の景品としてゲットしたもの。今回、来場者にプロモーションしてもらうプロジェクトを考案しました。SNSに「#のえのん #PR」をつけて投稿すればぬいぐるみを持ち帰ることができ、来場者自身がプロモーションを主体する側になる機会にしたいという思いがありました。

美術学部 彫刻学科 4年
3illi 《まちだシルクメロン 地域共創デザインプロジェクト》

町田市の名産品「まちだシルクメロン」ブランドとのプロジェクトを展示として展開した。まちだシルクメロンは「町田新農法」と呼ばれる水耕栽培によって、瑞々しい糖度の高いメロンの栽培を可能にしました。そこで、まちだシルクメロンの認知度アップや、生産者と消費者をつなげるための展示を展開。出品スペースの中央に、水耕栽培をイメージできるよう、頭上に布が張ってあり、その上に、来場者が模様を描いた風船を投げ入れて楽しめるしかけになっています。また、福祉事業所とコラボレーションしたパッケージデザインの商品を陳列し、その他にも、ケーキ、カレーなどの商品のイメージも展開。「生産者と地域の消費者を繋げるのがこのプロジェクト。今回の展示だけで終わらずに、今後も活動を続けていきたいとチームも思っているでしょう。」と、大島館長。「生産者の方からメロンを次の世代にどう繋げていくかが課題と聞き、工夫しました。」と、3illiのメンバーは話します。

丸山竜司さん、眞鍋咲紀さん、金井田誠悟さん
美術学部 情報デザイン学科 情報デザインコース 3年
展覧会の開会式も行われました

10月18日、16:30に開会式がとり行われ、理事長ら4人の挨拶の後、本展覧会の出品者が次々と紹介されました。その後、演劇舞踊デザイン学科の学生によるパフォーマンスも披露され、会場に集まった人たちはじっとそのパフォーマンスをみつめ、開会式は盛大な拍手とともに幕を閉じました。
青柳正規理事長よりご挨拶
今日は美術史に携わってきた者として、大変感慨深い日です。日本は第二次世界大戦終了後、さまざまな地域で美術館が作られるようになりましたが、美術館は徐々に「美術史の美術館」の面持ちが強くなっていきました。本来、美術は様々な側面や可能性を持つはずです。しかし、1970-90年頃から近代美術館やそれ以外の美術館でも、美術の歴史を中心にした展示が主流となり、美術の多面的な面白さが削られていってしまいました。
そうした現状をここ20-30年の中で体験的に多くの美術館が知るようになり、「美術史の美術館」ではない面が強調されるようになっていきます。その一端が、アクセシビリティとインクルーシブな概念を美術館により取り入れて、「美術を楽しもう」という気運の高まりでした。

今、アメリカで最も人気のある美術館が、2003年に開館したニューヨーク郊外にあるDia Beacon(旧ナビスコ・パッケージ印刷工場)です。コンテンポラリーアートを展示して、大変な人気を博すようになりました。それは、ホワイトキューブに置いた美術でなくて、既成の空間の中でも美術品が大きな力を持つことを示しました。
それがようやく、このBLUE CUBEの存在によって、日本にも定着するきっかけとなり、日本のアートシーンを変えていく可能性が出てきました。それほど大きなものと期待しつつ、そうならなければならない思いもあります。
内藤廣学長よりご挨拶
1年ほど前、演劇舞踊デザイン学科の学生と話をしていたら、何かの息苦しさをずっと抱えながらも、身体表現を通じて演劇舞踊を生きています、と聞かされました。彼女とその後も、「息苦しさの元」について語り合ったんですが、資本主義の話になりました。私は建築家ですから、その資本主義経済を受け入れないと仕事ができません。資本主義の枠組みの中にとどまる限り、霧は晴れないと思っています。若い人もそのことを感じているわけです。

なぜそんな話をしたかというと、このBLUE CUBEという場所はとてもおもしろいからです。スーパーマーケットとして資本主義的な枠組みの中でこれまでフル稼働していた存在でしたが、BLUE CUBEとして、今は違う意味を持っている。ある種の自由な空気を与えてくれる存在に生まれ変わろうとしているわけです。今日展示されている作品は、そうした自由な気分に反応してできているような気もします。つまり、BLUE CUBEが資本主義の枠組みの裂け目の外に出ることができる、不思議な場所になっている。おそらく他の美術館ではそうはならないでしょう。僕らが求める空気をBLUE CUBEは可能にできる場所だと感じました。作家の方たちは、その空気に呼応して作品を作ってくれたんだと思います。
小泉俊己副学長よりご挨拶
今日午前中に行われた90周年記念式典に、小清水漸さん(「もの派」の中心的なメンバー)にゲストでお越しいただきました。小清水さんは、本学内に設置されたモニュメント《空の台座》を制作した関根伸夫さんが1968年に神戸市・須磨離宮公園で制作した《位相-大地》の制作を手伝った方です。小清水さんはそのとき、穴を掘り、土をためる作業を繰り返し、最後に型を外したときに現れたものが今まで見たことがない現代美術の衝撃で、そこから新たな現代美術が始まった実感があり、それは自分で体を使って知った実感だったということでした。

皆さん自身の美術史の中にも、そうしたポイントで起きる発見や変化が訪れるでしょう。でも、なかなかその瞬間はわからなかったり、後になって気づいたりするものです。ただ、その発見に至るには、日々の制作を続けていくことが不可欠です。生成AIが生まれた時代にありながらも、僕らは身体を使って作り続けることが課された使命だと思い、これからも皆さんにより良い制作をしていただきたいと思います。そういう意味でも、この展覧会は重要なポイントになりうるものでしょう。
開会式に演劇舞踊デザイン学科の学生によるパフォーマンスも行われました
演劇舞踊デザイン学科の学生が、開会式にパフォーマンスを披露。 パフォーマーの他、衣装デザインや衣装制作など、たくさんの学生が参加しました。本パフォーマンスは、本展関連イベントとして10月26日にも開催されました。

出品者
陳 柏欣(チェン・ポーシン)[日本画 博士3 年]
胡 琪(コ・キ)[プロダクトデザイン 助手/油画出身]
山田 大輝[版画 修士2 年]
加藤 舞[彫刻 助手]
紫谷 きづな[彫刻 修士2 年]
のえのん[彫刻 学部4 年]
檜木 小春[工芸(陶) 修士1 年]
池上 創[工芸(ガラス) 副手]
坂爪 亜蓮[工芸(金属) 修士1 年]
大島 宏士郎[グラフィックデザイン 学部4 年]
砂子 愛[プロダクトデザイン 学部4 年]
河合 音和+水野 ねね+湯浅 薫子[テキスタイルデザイン 学部4 年]
藤原 禎之[建築・環境デザイン 修士2 年]
鄧 丁文(トウ・チョウブン)[メディア芸術 学部4 年]
3illi/金井田 誠悟+眞鍋 咲紀+丸山 竜司[情報デザイン 学部3 年]
レモラ/寺嶋 希海+中川 新+野澤 遥歩[統合デザイン 学部4 年]
開催中には関連イベントも行われました
出品作家によるトークセッション
- 11 月1 日[土]11:00~12:00
- モデレーター鍵谷 怜[芸術学 助手]
- 登壇者陳 柏欣、胡 琪、山田 大輝、加藤 舞、紫谷 きづな、檜木 小春、池上 創、坂爪 亜蓮
- 11 月 2日[日]11:00~12:00
- モデレーター鬼頭 明里[芸術学 修士1 年]
- 登壇者のえのん、3illi(金井田 誠悟+眞鍋 咲紀+丸山 竜司)、レモラ(寺嶋 希海+中川 新+野澤 遥歩)
- 11 月 3日[月・祝]11:00~12:00
- モデレーター網代 瞳子[芸術学 学部4 年]
- 登壇者大島 宏士郎、砂子 愛、河合 音和+水野 ねね+湯浅 薫子、藤原 禎之、鄧 丁文
本学教員による座談会 「タマビのあの頃と今」
- 11 月1 日[土]13:30~15:00
- モデレーター大島 徹也 [本展監修]
- 登壇者小泉 俊己[副学長/絵画学科油画専攻教授]
詫摩 智朗[統合デザイン学科教授]
髙橋 庸平[グラフィックデザイン学科准教授]
諏訪 未知[絵画学科油画専攻専任講師]
演劇舞踊デザイン学科学生によるパフォーマンス「 f(展)」
- 10月26日[日]14:00~/16:00~
- 企画演出武田 桜和 [演劇舞踊デザイン学科 劇場美術デザインコース 2年]
- 身体表現弦巻 てをり [同学科 演劇舞踊コース 3年]
吉浜 芽生人 [同学科 演劇舞踊コース 2024年度卒・賛助出演] - 衣装デザイン手島 遊、森田 凜々子 [同学科 劇場美術デザインコース 2年]
- 衣装製作太田 由風、後藤 ルカ、武田 桜和、手島 遊、中村 春菜、永岡 あいの、松尾 陽夏、森田 凜々子 [同学科 劇場美術デザインコース 2年]
- 空間デザイン武田 桜和
- サウンドデザイン武田 桜和
- 記録動画・写真撮影森島 碧衣 [同学科 劇場美術デザインコース 2年]
- 制作進行武田 桜和、森田 凜々子
のえのん×拡張ソングミュージック パフォーマンス
-
[第1弾]ソロ・パフォーマンス
10月19日[日]14:00~/15:00~/16:00~ -
[第2弾]ギターとのセッション
10月30日[木]16:00~16:30
- パフォーマーのえのん[彫刻学科 4年]
ハロウィン企画 The Backrooms Night Tour in BLUE CUBE
- 10月31日[金]17:30~18:30
- 案内人鄧丁文(トウ・チョウブン)[情報デザイン学科 メディア芸術コース 4年]
展覧会概要
展覧会名:多摩美術大学創立90周年記念事業
EXPLOSION & EXPANSION 爆発と拡張 ── 多摩美術大学の制作の現場から
会期 :2025年10月19日[日]~11月3日[月・祝]
会場 :多摩美術大学 BLUE CUBE
主催 :多摩美術大学
監修 :大島 徹也
企画 :多摩美術大学美術館
学芸担当:大島 徹也、淵田 雄、渡辺 眞弓、髙久 菜穂子
事務担当:保坂 洋平
