顕現する力

伊森 進一郎

作者によるコメント

建築において意匠と構造は表裏一体の関係にある。2つの性能を弁証法的に両立させるため、構造体の力強さや合理性から導かれる美しさを建築に統合し、現代社会に主張することを目的とした。敷地である日本橋は、江戸の街並みを残しつつ、戦前から交通の要所としても発展してきた。しかし、首都高速道路が川の真上を通過しており、良好な景観は失われている。現在この区間は全長1.8kmを地下化する計画が進んでいるが、私は発展の象徴であるこの「道路」を隠蔽するのではなく、新たな「橋」として再構築する道を模索した。大胆に斜張橋形式で道路の高度を上げ、巨大な構造をあえて風景として取り入れることで、都市に空間的な価値が生まれる。これは、後世に向けた新たな都市インフラへの可能性である。

担当教員によるコメント

本作品は、首都高日本橋区間の地下化計画に対し、建築的視点から異議を唱えた野心的な提案である。地下へ隠すのではなく、地上90mに斜張橋を架ける提案は、逆転の発想として高く評価できる。技術的核となる湾曲した「リングガーダー」システムにより、片側の橋桁のみを保持しパノラマを遮らない開放的な空間を実現した。構造表現も緻密で、斜張橋のテンション材を主塔の補剛に転用することで、ヒューマンスケールな部材断面を実現し、巨大インフラの威圧感を排除することで、工学的合理性と美学を高度に両立させた。経済性や施工性への配慮も誠実である。空から隔離された日本橋川の景観を現代の技術で繋ぎ、都市と環境の新たな共生を示す本作は、地下化計画に一石を投じる卓越した空間デザインである。

准教授・犬飼 基史

  • 作品名
    顕現する力
  • 作家名
    伊森 進一郎
  • 素材・技法
    素材=スタイロフォーム、チップボール、ピアノ線/技法=3Dプリント(UV硬化樹脂・PLA)
  • サイズ
    全体敷地模型=H435×W1682×D594mm/構造模型=H485×W841×D594mm
  • ジャンル
    模型・図面
  • その他作品情報
    計画地:東京都中央区日本橋
    模型スケール:1/1000、1/200
  • 学科・専攻・コース
  • 担当教員
伊森 進一郎 《顕現する力》 | 多摩美術大学