piece

中川 市悟

作者によるコメント

「piece」は、椅子をつくろうとしたことから始まった。骨や関節、筋肉や皮膚が重なる「からだ」のイメージを輪郭として立ち上げ、なめらかさと骨ばりが同居する形をベースにした。形状追求の末行きついた3Dプリントの最大255mm角の制限が分割=ピース化を必然にし、グリッド管理のうえでボロノイ的な不均一さも取り入れる。積層跡や継ぎ目、分割線は隠す欠点ではなく造形の特徴となり、つぎはぎの“ぼろ”のようで生き物の断片にも似た佇まいを生む。白いベースに、色や形状の異なるピースを組み替えることで椅子にもオブジェにも変化し、触れる人が「好き」に従って組むたび用途が更新される。未完成の輪郭を余白として開く、身体と家具のあいだの「居場所」を探る試み。

担当教員によるコメント

椅子は、身体に近い、小さな建築と言われるが、単なる道具にとどまらず、究極のパーソナライズを具現化したものである。中川市悟さんは、当初から身体性に着目していたが、具体化する段階では時間をかけて試行錯誤を重ね、最終的に道具や環境が、使う人の動作に応じて変容し、最適化できる仕組みをデザインすることを卒制とした。結果、椅子のようなものを生み出すことになったが、形態は敢えて定めていないという。
デジタルファブリケーションの制作過程において偶発的に起きたバグのようなものを 取捨選択してクリエイションに取り込み、魅力に転換するセンスが光る作品である。骨格標本を想起させるエレメントのフォルムは、ユニークさと同時に、アノニマスなニュアンスをもっている。組み合わせの変化によって意味の変換が起きた後はどこに向かうのか、今後の展開が楽しみである。インクルーシブな方向へ行くのか、究極のパーソナライズの方向に行くのか、あるいは第三の道を見出すのか、注目していたい。

教授・湯澤 幸子